8月の法話(令和6年)
「大切なもの=ほしいもの」ではないのかも…
【今月の言葉】
大切なものはほしいものより先に来た
ジン=フリークス
今月は、冨樫義博氏が連載しているHUNTER×HUNTER(ハンターハンター)という漫画から紹介させていただきます。このお話は、ゴン=フリークスという少年が父のような最高のハンター(怪物・財宝・賞金首・美食・遺跡・幻獣などを追いかける職業)を目指す物語です。
物語の中でゴンは父であるジンに今何を追っているのか尋ねると、ジンは昔ある王墓の真実を追いかけていたときの話をします。
念願かなって王墓の中に足を踏み入れた時、オレが一番うれしかったのは、ずっと願っていた王墓の『真実』を目の当たりにしたことじゃなく、いっしょに中へ入ったそいつらと、顔を見合わせて握手した瞬間だった。
そして、その仲間たちは今でも支えてくれているそうです。ジンにとってたどり着いた王墓の「真実」は、出会えた仲間たちと比べたらただのおまけだというのです。そして言います。
大切なものはほしいものより先に来た
善導大師(ぜんどうだいし)が書かれた『浄土論註(じょうどろんしゅう)』に「衆生(しゅじょう)の願楽(がんぎょう)するところ 一切よく満足す」という言葉があります。仏さまは私たちの国土をご覧になったとき、出世を願っても叶えられない人や命の長短が思い通りにならない人などを見て、我が国土ではそれぞれの人が起こす様々な欲求にそいながら、さらに深い存在自体の願いを満足させようといわれたと説かれています。
私たちはいろんな欲求を叶えて幸せを得ているという感覚でいますが、他者と比較して喜んだり憂(うれ)いたり、手にしたものも一時の輝きに過ぎなかったりと、一つのものを得ても満足しきることがなかなかできません。私たちが「ほしいもの」と思っているものは、迷いを深めていくものでもあり、自分自身を本当に満足させ続けていくものではないようです。だからこそ、能力や条件になどの満足よりももっと深くにある、ただ私が私であること、あなたがあなたであること、そんな私たちがともにあること、そのことの大切さに目を向けていくことが呼びかけられているのではないかと思います。
今一度、自分自身にとって本当に「大切なもの」と「ほしいもの」とを考えてみましょう。