競うな 持ち味をイカせッッ
~範馬勇次郎~
今月は板垣恵介氏による格闘漫画『グラップラー刃牙』より、主人公の範馬刃牙の父にして、地上最強の生物といわれる格闘家、範馬勇次郎のセリフをご紹介させていただきました。力自慢のビスケット・オリバが拳法の達人である龍書文(ろんしょぶん)との格闘の試合に臨む際に勇次郎が送ったアドバイスです。なぜ勇次郎はこのようなアドバイスを送ったかというと、実はオリバは自身の強みである「力」を封印して相手の土俵である「技(術)」で戦おうとしていたのです。勇次郎は自身の経験を通して相手のスタイルに囚われることでのびのびと戦えないことを知っていたのでしょう。
私に置き換えてみると、運動できる人、勉強ができる人や何か特技を持っている人を見ると羨ましく思ったり自分自身が劣って見えたりすることがあります。それをバネに成長の機会になることもありますが、一方でその努力が行き詰まるとむなしさを感じ、私自身が否定されたような気になってしまいます。このように一つの価値観にとらわれることを仏教では「執着」といい、この執着こそ苦しみのもとだと考えています。
阿弥陀様はそんな私の命の在り方を知っておられたうえで、お浄土という世界をご用意くださいました。
そのお浄土がどんな世界か説かれている『仏説阿弥陀経』に「青色青光 黄色黄光 赤色赤光 白色白光」というご文があります。阿弥陀様はお浄土に、色とりどりの蓮の花が咲いていて、青い色の花は青い光を、黄色い花は黄色い光を、赤い花は赤い光を、白い花は白い光を放っているように、あなたはあなたのままで輝く命ですよとお示しくださっています。
範馬勇次郎のセリフと阿弥陀様のおこころを重ねてみますと、阿弥陀様は私のそのままを「持ち味」であるとご覧になっていると味わうことができます。
他人と競わずとも、あなたはあなたのままで尊い命であるという阿弥陀様のおこころを聞かせていただいても、人と比べずにはおれないのが私です。『グラップラー刃牙』のような戦いの世界を離れることができません。そんな私を知ったうえで、阿弥陀様は南無阿弥陀仏のお念仏を通して、安心を与えようと寄り添い続けてくださるところに私が私のまま生かされるよろこびがあるのだといただいております。
