2月の法話(令和6年)
大事なのは、思いやりと笑顔とやさしい言葉かけ
【今月の法語】
和顔愛語にして意を先にして承問す(仏説無量寿経)
【語句説明・豆知識】
◎和顔愛語(わげんあいご) 「和顔」は柔らかな表情、「愛語」は優しい言葉かけ。笑顔に満ちた愛情のこもった言葉で語りかけるということ
◎先意承問(せんいしょうもん) 相手の気持ちをいたわり、先に相手の気持ちを察して、相手のために何ができるかを考え、自ら進んで手を差し伸べていくこと
人と接するときに、相手が笑顔であったり、おだやかな表情であるとホッとするものですが、逆に苦虫を噛み潰したような表情だったり、いわゆる「仏頂面(ぶっちょうづら)」であったりすると緊張感も高まってしまいます。出来るだけ相手に緊張感を与えないように「和顔愛語」でいたいものだと思います。
ところで、不愛想な顔つき・不機嫌な顔つきをさす「仏頂面」ですが、不思議なことに「和顔愛語」を実践されているはずの「仏様のお顔(面)」が、不機嫌の象徴とはどういうことなのでしょうか。「仏頂面」の由来を調べてみますと、【語源由来辞典】には『「仏頂」とは「仏頂尊」のことで、仏様の頭上(仏頂)に宿る大いなる功徳から生まれたもの仏様である。仏頂尊の面相は智慧に優れ威厳に満ちているが、不愛想で不機嫌にも見えることから「仏頂面」という言葉が生まれてと考えられている。また嫌そうな顔つきの「不承面(ふしょうづら)」が転じたという説や、不貞腐れた(ふてくされた)顔つきの「不貞面」から「仏頂面」になったという説もある。音声化後に「仏頂面」の字が当てられたとすれば考えられる説である』とあります。仏様が難しい顔をなさっているからということが起源のようですが、仏様が不愛想で不機嫌にも見える表情をなさっているのは、私たちを救うために考えぬいてくださっているお姿なのですから、まさに「先意承問」です。決して単に不機嫌なのではないのですから「仏頂面」という言葉も申し訳ないような気持になります。
仏様は私たちをどうして救うかということをお考えになるときには難しい顔をされますが、「和顔愛語」とありますように、すべてを包み込んでくださるような優しいお顔をされていて、そのお姿に触れるだけで私たちは「安心」できます。この仏様から教えていただいた「相手を安心させる」という行い(布施)は、私たちにもその真似事はできます。もっともあくまでも真似事ですから、仏様のように完全にできるわけではありませんが、それでも人を安心させる力を持っています。今能登半島で被災された方々のために、多くの方々が物心両面で奮闘されています。これはまさに「無財の七施」として教えていただいている「布施の行い」なのではないかと頭が下がる思いです。
無財の七施とは、①眼施(げんせ)(あたたかいまなざし)②和顔悦色施(わげんえつじきせ)(にこやかな表情)③言辞施(ごんじせ)(やさしい言葉)④身施(しんせ)(精一杯のおこない)⑤心施(しんせ)(慈しみ深いこころ)⑥床座施(しょうざせ)(人にあたたかい席を)⑦房舎施(ぼうしゃせ)(気持ちよく迎えるこころがけ)です。日常の中で、人と人の関りを大切にしながら、この教えを心にとどめ、出来るときには実践する思いでいたら良いのではないかと思います。