1月の法話(平成31年)
1月の法話(平成31年)
私だけよければそれでいいの?
仏様のおさとりの世界を表現する言葉は沢山あります。
ちなみによく使われる天国はキリスト教の言葉です。仏教では天上界と言いますが、天上界はまだ欲望に支配された迷いの世界(六道輪廻の世界)なんです。
皆さまは、極楽という言葉を聞かれたことがあるかもしれませんが、この極楽は仏様の世界をあらわす最も有名な言葉です。
極楽と言うと、楽しみ・楽(らく)に極まりなしと書きますから、なんだか自分の望みがかなってしまう世界のように思ってしまいがちですが、ここでいう楽しみ・楽は、私たちが普段考える、楽しみ・楽という事とは大きな違いがあります。私たちの楽しみは、もちろん相手が楽しむことも含まれることもありますが、突き詰めてみると自分がよければいいという心が根っこにあります。ですから、人の喜びが自分の喜びにならない、場合によっては人の喜びが腹立ちや妬みになることも少なくはありません。
「隣の家に蔵が立てば、こちらの家では腹が立つ」と言われますが、そんな経験を持つ方も少なくこれに対して、仏様の楽しみとは、相手が喜ぶ事をわが楽しみとする、自分のことよりも相手のことを第一とするという心です。
最近のニュースで、東京青山で、児童相談所などの施設建設に地域の方々が猛反発しているということがありました。猛反発している方は一部の方であり、ある調査によるとあの地域にお住まいの方で、施設の建設に賛成している方は80%だと報道されてもいましたから、決して皆さんがこぞって反対をしているわけでもないのですが、それでもこの報道を聞くと残念な気持ちになります。自分たちもまわりのご縁やおかげで育んでもらったはずですから、次は自分たちが育む責任があると思うのですが、テレビでは自分の生活が、土地の価値が、と自分のことだけを主張する言葉が飛び交うのが少し残念です。これからの時代を生きる子どもたちを1番に考えることが、今の時代には少し難しくなってきたということは言えるのでしょう。
ただ、あの問題の背景には、行政がどれだけしっかりと責任をもって地域の方々に丁寧に説明をしていたかということもあると思います。日本の行政と地域との関係ということなども含めて、これからどのような時代環境を選択して生きていくのかという課題を私たちに投げかけている問題でもあると思います。
極楽は、自分のことよりも人の喜びをち先とするという仏様の心を私たちに伝える言葉です・・自分だけよければそれでいいの?そんな言葉を 自分の中で繰り返しながら新しい年を歩み始めましょう。